あらすじ
四百年前、勇者アーサーと共に魔神と戦った剣士ルクス・ウェイン。彼は仲間を逃がすため、たった一人で戦場に残り――死んだ。
目が覚めたら、四百年が経っていた。
しかも、禍々しい黒の魔導鎧と、一体化していた。
出会う者すべてに悲鳴を上げられながら、置き去りにされた新米治癒術士を助け、燃える町から母子を救い出す。ルクスにとっては、ただ助けを求める声に応えているだけ。
なのに、気づけば。
助けられた町の人々が語り、吟遊詩人が歌い、噂が噂を呼んで――ルクスの知らないところで、"深紅のマントを纏う黒騎士"の英雄譚が、勝手に完成していく。火から救い出した母子は、いつのまにか何百人もの民に。町を襲った魔物の群れは、いつのまにか千の軍勢に。隣で人々の傷を癒やした新米治癒術士は、なぜか"聖女様"と呼ばれはじめる。
「待ってくれ。動く鎧と、新人の治癒術士。それがどうして、"黒騎士"と"聖女様"になるんだ……?」
善意で人を助けるたび、伝説だけが、どんどん大きくなっていく。
しかもその伝説は、めぐりめぐって、王国の思惑まで巻き込んでいって――。
神にも聖剣にも選ばれなかった、ただの凡人。その男が四百年後の世界で、本人の意図とは無関係に、伝説になっていく物語。