あらすじ
辺境伯令嬢リリアーナは、王太子の婚約者として誰からも愛される清楚な令嬢だった。
だが王都の貴族たちは知らない。
王国最前線の辺境が今日まで平穏だったのは、辺境伯家が代々その身を削り続けてきたからだということを。
ある日、王太子は大勢の貴族が集う夜会でリリアーナとの婚約を一方的に破棄する。
それは一人の令嬢を捨てただけではなかった。
辺境伯家が王国へ捧げてきた忠誠と献身を踏みにじる行為だった。
しかし王都の誰も気付かない。
辺境伯家がどれほどの犠牲を払い、 どれほどの善意で王国を支えてきたのかを。
婚約破棄を受け入れたリリアーナは辺境へ帰還する。
そして辺境伯は決断した。
「門を閉じろ」
守るのは領民のみ。
これまで当然のように行ってきた王都への支援も、周辺領地への援軍も、魔物の追撃も、すべて終わりだ。
助けても感謝されず、 尽くしても当然だと扱われ、 挙げ句の果てに忠誠まで踏みにじられた。
ならば、もう十分だろう。
辺境都市の門が閉ざされたその日から、王国は初めて知ることになる。
自分たちが見下していた辺境伯家が、何百年もの間、王国そのものを守っていたのだと。
これは、善意を失った王国が崩れ落ちていく物語。
そして、婚約破棄された令嬢が静かに故郷で暮らそうとしただけの物語である。