あらすじ
かつて、日が沈んだ夜天からは、何も見えなかった。
陽光が育んだ生命も、夜闇の中では息を潜める。
ただ、月女神だけは夜を愛し、夜を纏った。
夜天に気高く佇む月は、闇を優しく照らす。
その孤独を哀れんだ者がいた。
並び立つ者のいない夜空で孤高に咲く月。
彼女を哀れんだのは、一陣の風。
月女神は、その風に罰を与えた。
千夜、花の香りを届けるように、と。
風は花を知り、香りを知り。
そして地上に住まう者たちの心も知っていく。
千夜の果てに得たものこそ。
『其は、夜天を駆ける白銀の風』
ーーウェンテスナハト神話異聞