あらすじ
肝付 ひな子は都内のショットバーで、バーテンダーを相手に他愛もない話をしていた。昨晩Gが出て、大騒ぎしたのだと。
酔いに任せて、世の中のありとあらゆる不快害虫――いや、虫そのものはいなくなればいいとまで言い切る。
ひな子の虫嫌いは徹底していて、虫偏のついた漢字すらダメという。
しかしながら唯一、『虹』だけは許せる。それは子どものときに両親と虹との美しい思い出があるからだ。
それにしてもなぜ『虹』という漢字は虫偏がつくのだろうか……?
そのとき偶然居合わせた客が会話に加わる。
男は家守(けもり)と名乗った。彼は毛深く、なんと眉毛がつながったリアル・両津勘吉――あるいは若いころの我修院達也に瓜二つの、怪しさ全開の男だった。
家守は言う――私は13年前、商社マン兼【なんでも屋】で、あるクライアントから依頼を受けた。伝説の発毛剤の元となる高山植物『天梯草』を入手せよとの任務だ。
『天梯草』は中国雲南省の南部にある亜熱帯性ジャングルの深山を分け入った先にあるという。
湖にそそり立つ島のてっぺんにだけ生えるらしい。現地に飛び、さっそく地元集落の人間と接触。そこで驚くべき方法で島に渡ることを教えてもらう。
――私は虹を渡った男なのだ。
※本作は夏のホラー2026企画作です。お題は『音』。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。