あらすじ
狂ったような蝉時雨のなか、私は現実から逃げ出していた。
不登校になって三ヶ月の如月渚(キサラギ ナギサ)。
親戚の視線に耐えかねて逃げ込んだ古い神社で、私は「彼」に出会った。
真夏だというのに黒い学ランとマントをまとい、人間離れした美貌を持つ少年・夏目。
学帽の影から覗く瞳は、夏の海を閉じ込めたように青かった。
「この夏休みの終わりまでに、俺の本当の正体を暴いてみてよ。
お前が勝ったら、何でも一つ、願いを叶えてあげる」
現実を消し去りたかった私は、その奇妙なゲームに乗ることにした。
足跡のつかない白い砂浜、不意に風にさらわれて露わになった金髪、二人きりで見た幻の夏祭り。
夢と現実の境界が溶けていく日々のなかで、私は彼が隠し持つ「戦時中の悲劇」の記憶に触れていく。
――なぜ彼は自分を黒で塗りつぶしたのか?
夏休みの最果て、彼が最後に耳打ちした本当の名前を知ったとき、孤独な少女は未来を生きるための「夢」を見つける。
ひと夏の切なくも美しい、幻想ジュブナイル。