あらすじ
メガバンク本店の営業本部に勤務する桐生誠、三十二歳。
大手物流会社による三百億円規模の新規事業を支援するため、融資提案を進めていた桐生だったが、上司から命じられたのは、顧客企業の社長と銀行常務の会食準備だった。
事業の中身よりも、社内政治や根回しが優先される日々。
誰かの挑戦を支えるために銀行員になったはずなのに、自分は何をしているのか。
「次があるなら、自分が正しいと思う仕事をしたい」
そう願いながら意識を失った桐生が目を覚ますと、そこは魔法と魔物が存在する異世界だった。
彼を拾ったのは、港町アルディスを治める若き領主エレノア。
海賊、飢饉、先代領主の死、官僚の不正。
数々の問題を抱える領地の帳簿を見た桐生は、わずか数刻でその危機を見抜く。
「この領地は赤字なのではありません。あと三十日で、支払う金がなくなります」
魔法は使えない。
剣も振るえない。
桐生にあるのは、決算書を読み、事業の可能性を見抜き、人と組織を動かしてきた銀行員としての経験だけ。
これは、正しい答えを出すのが早すぎる元銀行員が、数字だけでは人は動かないと知り、信用によって領地と人々の未来をつくる物語。