あらすじ

リディアは、何も書き留めない。 三十七家の縁戚と確執を、頭だけで持っている。 誰と誰を同じ卓に着けてはいけないか。 どの家に何年、何を贈ったか。 紙に残らないので、誰も仕事とは呼ばない。 伯爵夫人として十年、そう扱われてきた。 夫は人前で、妻の実家の名を言い違える。 訂正するのは、いつも彼女の側だった。 ある日、夫が客をひとり増やすと言う。 妹の友人だという、若い娘。 どこに座らせるかは、任せると言われた。 その夜、十二枚の名札を書いた。 最後の一枚には、家名だけを書いた。 娘の名前は、尋ねなかった。 やがて噂が屋敷に届く。 夫はそれを否定しない。 君は気にしないだろう、とだけ言った。 リディアは翌年の贈答の予定を書き終える。 書き終えて、手を止めた。 覚えるのを、やめたのである。 手順なら、紙に書いて渡せる。 なぜそうするのかは、どこにも書けない。 覚えられなかった側が、覚えるのをやめる。 そのあとに何が残るのかを、まだ誰も知らない。

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小説を読もう2026/07/26
  • 現在の作品申し訳ありません、どちらの家の方でしたか