あらすじ
殷商の王・殷壽は、十三年の戦を経て国を治める術には長けていたが、妻の心に近づく術を知らなかった。
女媧の生誕祭を控えたある雨の夜、彼は正装に身を包み、妻・姜皇后の斎宮を訪れる。しかし扉は開かれることなく、二人の間に、誰にも気づかれない最初の亀裂が生まれた。
数日後、姜皇后は雪山で一匹の傷ついた白狐を助ける。誰もがそれを瑞兆と呼んだが、彼女はただ、傷ついた小さな獣として、その狐を宮中へ連れ帰った。
四年の歳月、白狐は姜皇后のそばで人間を見つめ続けた。王と后が、近づきたい気持ちを「べつに用はない」という言葉に変えてしまう様を。
そしてある夜明け前、女媧は白狐に、封じられていた名と力を返す。
その名は――妲己。
だが、この物語における妲己は、まだ妖妃ではない。 殷商も、まだ滅びてはいない。
これは、封神が始まる前――婚姻、寄り添い、執着、そして言葉にならなかった想いをめぐる物語。
誰も間違ってはいない。ただ、皆が何かを失っていく。