あらすじ
国語の授業中、保健室で眠っていたはずの朝比奈恵瑠。目を覚ますと、そこは二つの月が浮かぶ魔法の世界だった。
しかも目の前には、銀の杖を突きつけてくる氷点下の美少年。「動くな。動いたら消し炭にしてやる」彼の名はカレン・セレスタイン。この帝国の皇帝の孫にして、口を開けば毒しか出てこない、恵瑠を殺しかけた張本人。
この世界の魔法使いたちにとって、人間は御伽話の中の生き物。実在が知れれば、待っているのは解剖か処刑。行き場のない恵瑠に、カレンは思いがけない提案をする。
「東方からの留学生として、俺の学園に通え。一ヶ月以内に、必ず元の世界に返してやる」
こうして恵瑠は、偽りの名「ノエル・アシュリー」を名乗り、魔導学園に潜り込むことになった。魔法はまるで使えない。この世界の常識も知らない。
素性を隠しながらの学園生活は、綱渡りの連続だ。優しすぎる公女のルームメイト、マイペースな使い魔使いの少年、自称・誇り高きドラゴン。そして、こちらの正体を探る大人たち。
やがて恵瑠は知る。この世界が、誰かの仕組んだ盤上であること。そして、その盤の上で――カレンが炎に飲まれる未来を。
「あなたが死ぬ未来を、私は見たの」
一人で全てを背負おうとする少年に、恵瑠は手を伸ばす。駒として使われるためじゃない。隣に座る仲間になるために。
タイムリミットは、一ヶ月。
帰りたい少女と、帰したい少年の、期限つきの物語が始まる。