あらすじ
人体にインプラントを埋め込むことが当たり前となった、高度科学世界。
普通の家庭に生まれながら、並外れた才能を認められた十八歳の研究者・天暁リュウセイは、世界のあらゆる産業を支配する巨大企業「御影」へ入社する。
自らの優秀さを疑わず、内心では周囲を軽く見ていたリュウセイ。そんな彼が出会ったのは、二歳年上の先輩研究員・宵宮スピカだった。
穏やかで丁寧な物腰を持ちながら、研究ではリュウセイの先を行き、戦場では彼を圧倒する実力を持つスピカ。初めて出会った自分より強く、賢い存在に、リュウセイは強く惹かれていく。
二人は研究員として時空間の謎を追いながら、ときに下層地区へ赴き、戦い、互いの理論と力を磨いていった。
やがて数年の月日が流れ、二人は世界の外から迫る脅威を発見する。
あらゆるものを消し去り、世界すら喰らう超越的存在――消失帯。
御影にも、それを倒すすべはなかった。
自分たちの世界を守るため、御影が選んだのは、消失帯を別世界へ押しつけることだった。
故郷は救われる。
その代わり、名も知らない別の世界が滅びる。
自らの研究が利用された事実と、犠牲にされた人々への責任を背負ったリュウセイとスピカは、御影に背き、消失帯を追って世界の外へ旅立つ。
二人が乗り込んだ船には、旅の中でさまざまな者たちが集まっていく。
故郷を奪われた者。
別世界を救おうとする者。
自分のなすべきことを探す者。
仲間は増え、去り、時には命を落とす。それでも彼らは消失帯を追いながら、各世界に存在する戦争、支配、災害、そして神と呼ばれる存在に立ち向かっていく。
二人で戦い、二人で考え、二人で未知を越えていく。
しかし、どれほど多くの世界を救っても、すべてを守れるとは限らない。
これは、のちに数多の世界を渡ることになる一人の研究者と、彼を導いた一人の船長の物語。
そして、多くの命を救いながら、最も大切な一人を守れなかった男が、それでも旅を続けるまでの物語である。
この作品は「この虚空に咲く樹」「光を疑う花弁」「白いカラス」と同列のシリーズです。