あらすじ

西暦2738年、木星圏の若き研究者・氷室朔は、ヘリウム3とヘリウム4の量子統計の違いを利用した超流動分離法を発見する。ヘリオス・ダイナミクスは五年の歳月をかけ、木星大気に浮かぶ精錬プラットフォームと、雲頂から八万八千kmに及ぶ軌道エレベーターを建設。2750年、商業稼働と同時に従来価格の五パーセント未満という価格を打ち出した。 一年と経たぬうちに月・水星の採掘企業は軒並み暴落し、数世紀続いた資源経済は崩壊、第三次世界恐慌が地球連邦を襲う。外惑星への懲罰的な課税は独立運動を生み、局地的な衝突が広がっていった。技術者に過ぎなかった氷室は経営陣に押し上げられ、地球圏では「恐慌を引き起こした男」、外惑星圏では「独立への道を開いた男」と呼ばれる、太陽系で最も毀誉褒貶の激しい人物になっていく。 西暦2793年、外環評議会の独立宣言式典へ向かう車中、氷室は戦争で家族を失った男に銃撃され死亡する。安価なエネルギーで人々の暮らしを楽にしたいという素朴な願いは、対立する二つの歴史の物語のどちらにも、最後まで居場所を見つけられなかった。

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小説を読もう2026/07/25
  • 現在の作品木星の火