あらすじ
伝説の女王アマルティアと、大逃げの旅人ウインドベル。
二人の間に生まれた最初の子、ベルアマードが競駆の世界へ進んでから、少し遅れて一人の女駆が生まれる。
名は、ベルフレア。
後に“黄金の血脈”と呼ばれることになる一族。
その第二の物語にいたのは、兄の背中を追い、親友の輝きに憧れた一人の少女だった。
幼い頃から、彼女の前にはいつも兄がいた。
危ないものから守ってくれる兄。
誰よりも前を走り、少しずつ遠ざかっていく兄。
そして、世界中の視線を集める駆人となった兄。
その一方で、ベルフレアの手を取り、いつも少し先へ進んでいた親友がいた。
名は、エクラディーヌ。
親友として隣を歩きながら、競駆では誰よりも越えたい相手。
憧れ、羨み、妬み、それでも離れられない最大の宿敵。
兄の背中を追いかけるだけの少女は、やがて親友と同じ舞台へ立つ。
勝利の眩しさ。
敗北の痛み。
誰にも見てもらえない孤独。
胸を焦がす嫉妬と、消すことのできない憧れ。
そのすべてを抱えながら、ベルフレアは自分自身の走りを探していく。
黄金の血脈、その第二章。
ベルフレア編、開幕。
【世界観について】
本作は、競馬文化や血統ロマン、世代戦、レース体系の構造を取り入れた架空競技小説です。
作中では、駆人と呼ばれる者たちが「競駆」という競技に挑みます。
駆人たちはターフを自らの脚で走り、速さ、持久力、駆け引き、精神力を競います。
競駆の世界では、血統、寮、ライバル、世代戦、そして一生に一度しか挑めない大舞台が重視されます。
“黄金の血脈”とは、アマルティアとウインドベルの子どもたち、そしてその子孫たちを指す呼び名です。
ただし、物語の始まりから世間がそう呼んでいるわけではありません。
子どもたちが走り、勝ち、挫折し、さらに次の世代へ夢を繋いでいく中で、いつしか人々がその血を“黄金の血脈”と呼ぶようになっていきます。
本作『ベルフレア編』は、兄の背中と親友の輝きを追い続けた少女が、一人の女駆として自分の名を刻む物語です。
【主な用語】
駆人:
人間に近い姿と知性を持ちながら、人間とは異なる身体能力と成長速度を持つ存在。
言葉を話し、家族を持つなど、生活様式や感情は人間に近い。
一方で、脚力、心肺機能、反応速度、持久力は走ることに特化しており、自らの脚でターフを走る競技「競駆」に挑む。
駆人は人間より早く成長する。
0〜1歳で人間の5歳前後、1〜2歳で13歳前後、2〜3歳で18歳前後、3〜4歳で20歳前後に相当する心身へ成長する。
そのため、駆人は二歳で競駆デビューを迎え、三歳で一生に一度の大舞台「リュニーク」へ挑む。
四歳以降は成熟した駆人として扱われ、早ければ四歳で競駆を引退し、長く走る者は九歳前後まで現役を続ける。
九歳は人間でいう30歳前後に近く、競駆界では長く戦ってきたベテランの年齢にあたる。
九歳以降は成長が緩やかになり、人間の一年に近い感覚で年を重ねていく。
ただし、駆人の寿命は人間より短い。
見た目が若々しくても、二十歳を少し超える頃には寿命を迎える。
寮では、競駆のためのトレーニングだけでなく、成長段階に応じた勉強も行われる。
引退後は、トレーナー、医者、会社員など、人間と同じようにさまざまな仕事に就く。
競駆:
駆人たちがターフを走り、順位を競う競技。
速さだけでなく、持久力、駆け引き、脚質、距離適性、気性、血統、成長が重視される。
競駆場:
競駆が行われる施設全体。
観客席、通路、ターフ、関係者エリアなどを含む。
ターフ:
実際にレースが行われる舞台。
駆人たちが走る芝のコース。
GR/グランドランク:
競駆における最高格式のレース。
寮:
競駆を目指す駆人が所属し、生活とトレーニングを行う場所。
出走資格にも関わる重要な拠点。
風杜:
アマルティアとウインドベルが育った場所。
保護施設であり、のちに競駆寮としても認められる。
ベルフレアと兄ベルアマードが生まれ育った場所でもある。
男駆・女駆:
競駆における男性駆人・女性駆人の呼び方。
リュニーク:
三歳駆人が一生に一度だけ挑める最高格式の大競走群。
三歳駆人の頂点を決めるトリプルクラウンと、女駆の頂点を決めるトリプルジュエルをまとめた呼称。
トリプルクラウン:
三歳男駆を中心に挑む三冠路線。
雨月賞、日本クラウン、錦秋賞で構成される。
トリプルジュエル:
三歳女駆限定の三冠路線。
モルガナイト賞、ペイナイト賞、琥珀賞で構成される。
各競走の勝者には、その勝利を象徴する宝飾品が贈られる。
モルガナイト賞ではネックレス。
ペイナイト賞ではティアラ。
琥珀賞ではセプター。
三つすべてを手にした女駆だけが、トリプルジュエルの達成者として歴史に名を刻む。