あらすじ
人の心は、海によく似ている。
穏やかな日もあれば、荒れ狂う日もある。
けれど、三島真琴の海には、幼い頃から絶えず"ノイズ"が響いていた。
怒り、ため息、失望、沈黙。
人の感情に人一倍敏感な真琴は、周囲の空気を読み、本音を押し殺しながら生きてきた。
「私が我慢すればいい。」
それが、真琴にとって当たり前だった。
そんな彼女の世界を変えたのは、中学三年の春に出会った一人の少女、冴島花火だった。
誰かの顔色ではなく、自分の心に正直に生きる花火。
正反対の二人は、限られた時間の中でかけがえのない友情を育んでいく。
しかし卒業とともに、二人は別々の高校へ進学し、それぞれの道を歩み始める。
それから十五年。
スクールロイヤーとなった真琴のもとへ、一人の女子生徒が相談に訪れる。
「先生……私が我慢すれば、全部うまくいくなら、それでいいですよね。」
その言葉は、かつての自分と同じだった。
あの日、花火と出会った春。
伝えられなかった想い。
そして、雑音に埋もれていた自分の本当の声。
過去と現在が交差するとき、真琴は少女にどんな言葉を届けるのか。
これは、誰かの声ばかりを聞いていた少女が、自分自身の声を見つけ、やがて誰かの声を守る大人になるまでを描いた、静かで力強い青春ヒューマンドラマ。