あらすじ
勇者が放置した火竜は、討伐から三日で爆発寸前。
召喚失敗と笑われた元ごみ収集員・黒田慎吾だけが、その危険を見抜いた。
「火を近づけるな。その竜、腹の中がガスでパンパンだ」
王国が求めたのは、《すべての穢れを消す大浄化の勇者》。
だが現れた慎吾に、剣技も攻撃魔法もなかった。
あるのは十八年間の収集現場で身につけた、危険物を見分ける目、混ぜてはいけない物を分ける知識、事故を起こさない手順、そして誰もやりたがらない仕事を毎日続けてきた経験だけ。
慎吾は《腐敗封じ》の魔術師リオラと魔物回収班を結成し、勇者たちが魔石だけ抜いて放置した死骸を片づけていく。
圧縮しても重さは消えない。
焼けば毒煙が出る。
混ぜれば爆発する。
未知の物質を前世の常識で処理すれば、人を傷つけることさえある。
一人では解決できない現場で、蔑まれていた専門家たちの技術がかみ合っていく。
やがて慎吾は気づく。
人口八十万の王都から出る廃棄物は、処理施設の能力をはるかに超えている。それなのに、この街はなぜ清潔なのか。
魔石だけ抜いて死骸を捨てた英雄には、きっちり片づけ代を請求する。
召喚失敗のおっさんが、地味だと蔑まれた仕事で暮らしを守り、王国が辺境へ隠した巨大な不法投棄を暴く異世界お仕事ファンタジー。
死臭の魔女と呼ばれたリオラとの関係も、英雄への憧れではなく、同じ現場に立つ者同士の信頼から少しずつ変わっていく。