あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
【登場人物】
◆カリンンエ
王都の食糧配分局に勤めていた女性。外れ島への追加配給を手配したにもかかわらず、食糧不足の責任を一人で負わされ、故郷のカワ群島へ送り返される。数字と計画表を扱うことは得意だが、失敗を自分だけで抱え込む癖がある。
◆ブルヤン
壊れた橋や危険な足場を放っておけない設計技師。無愛想で言葉も冷たいが、いつも誰かが怪我をする前に動いている。安全ヘルメットを持ち歩き、無謀になりがちなカリンンエを何度も支える。
◆ユナス
港食堂で働く料理人。目分量で作る炒り卵は、霧の日にも人々を厨房へ呼び寄せる。明るく豪快だが、自分の料理は誰にでも作れるものだと思い込んでいる。
◆ペドロ
芝居と噂と交渉を武器にする旅芸人。騒ぎを大きくすることもあるが、笑いによって人々の耳を真実へ向ける。重苦しい場面でも、証人や弱い立場の者の逃げ道を作る男。
◆ロセ
群島の古文書庫を守る司書。竜と人間が交わした百年前の約束と、魔法の聖杯に隠された本当の意味を読み解いていく。
◆霧の竜王
カワ群島を覆う霧の中に住む老竜。人間が約束を破ったために怒っていると噂されるが、竜にもまた、長い年月の中で背負ってきた傷と責任がある。
【あらすじ】
クリスマス前夜。
王都の食糧配分局で働くカリンンエは、群島への食糧不足を引き起こした責任者として名前を張り出され、故郷のカワ群島へ送り返される。
しかし、帰り着いた群島は深い霧に閉ざされていた。
船は止まり、食材は届かず、公園には空腹の人々があふれている。そこでカリンンエが出会ったのは、目分量で炒り卵を作る料理人ユナスと、安全ヘルメットを抱えた無愛想な技師ブルヤンだった。
足りない卵を分けるための順番表。
火事を起こさないための通路。
誰でも確かめられる寄付帳簿。
壊れた橋を直すための足場。
外れ島へ温かい朝食を届ける船。
小さな工夫を積み重ねるうちに、カリンンエの周りには、料理人、船員、職人、教師、旅芸人、司書、子どもたちが集まっていく。
やがて彼女は、王都の帳簿に記された不自然な「聖杯管理費」と、群島に伝わる欠けた白い聖杯、そして百年に一度現れる霧の竜王の約束がつながっていることを知る。
王都だけを悪者にすれば、故郷の嘘が残る。
故郷を守ろうとすれば、自分の潔白を証明する記録まで傷つく。
誰か一人を鬼にするのではなく、失敗した者も、黙っていた者も、傷つけられた者も、同じ食卓へ戻れる道を探すカリンンエ。
これは、最低なクリスマスに故郷へ追い返された女性が、炒り卵と帳簿と安全ヘルメットを手に、霧に閉ざされた群島の朝を取り戻す物語。