あらすじ
ここはかつて『偉大なる獣たち』がいた世界。
だが今はその骸が世界を汚す時代。
骸から発生する毒素――瘴気が大気を侵食し、大地には魔物が蔓延っていた。
瘴気は風と共に流れ、瘴気は魔物を引き連れる。
ひとたび魔物が移動をすれば、人々の生活圏は容易く奪われていく……。
獣の耳と尻尾を生やした「誘導士」と呼ばれる者たちは、その耳で瘴気を捉え、その尻尾で魔物を誘い出す光を発生させることができる。
その能力を活かして誘導士たちは魔物の行き先を巧みに逸らし、人々の生活圏を静かに守っていた。
獣の耳と尻尾を持つ少女シーリアは師匠コリンの下で誘導士になるための修行をしていたが、実力はまだまだ半人前であった。
そんな中で修行場の近くを瘴気の風が吹き荒れる。
そして近隣の村に魔物接近の危機が訪れるが、その前に師匠コリンが負傷してしまう。
◯登場人物
⚪︎誘導士
・主人公
シーリア・ウォルヘンデン
16歳 女性
見習いの誘導士
腰から狼のような尻尾が生えており魔物の群れを誘導する力を持つ。が、その実力はまだまだ半人前。
実践経験に乏しく変化に対して機敏で上手く精神を落ち着かせることがまだ不十分。
過去:
名家であり熱心な聖火教の信徒である「ウォルヘンデン家」の次女として生まれる。
10歳離れた姉のイヴリンがいる。
16歳になったイヴリンから出現した尻尾が制御不能になり「ウォルヘンデン家」滅亡。
7歳の頃にコリンに引き取られる。
14歳になり、ユーニスも尻尾が出現。
そのままコリンに師事する。
早期に家族を失ったこともありコリンを父としてみている気配がある。コリンに認められたい、庇護下にいたいと潜在的な欲望がある。
その上で早く一人前になりたいと考えている。
見た目:
淡い銀色の癖っ毛のある髪、青くて丸っこい大きな瞳、柔らかいイメージ。
尻尾には村の子どもたちのいたずらにより小さい鐘(赤鳴)がくっついている。
・師匠
コリン・デナム
56歳 男性
立場:
熟練の誘導士、ユーニスの師。
静かで理知的。感情を多く語らないが、言葉一つひとつに重みがあり、沈黙に説得力がある人物。指導では「自分で気づかせる」ことを重視する。型破りを嫌い、日々のルーティンを大切にする。読書もその一つ。
背景:長年の経験の中で、何度も魔物の大移動を制御してきた伝説的存在。その代償として精神・肉体ともに疲弊(力の根本が瘴気によるものであるから内々に呪いを蓄えている)しており、今は後進の育成を務めている。ユーニスに対しては、その素直さや不器用さに最初は不安を覚えている。これまでに4人の誘導士を育て上げた。シーリアは5人目の弟子。
⚪︎ロッドフロー村
・村長
エバンス
ロッドフローの村長。50代男性
ロッドフローを愛し、ロッドフローと共に死ぬつもりでいる。
コリンとは契約関係で繋がる間柄であり、誘導士についてはあまり詳しくないがロッドフローが助かる道を無理にでも見出そうとする。
ロッドフローの近場に誘導士の訓練所を設けることを認めたのもロッドフローの安全を考えてのことだった。
遠慮知らずで思っていることをズバズバいう。実利的。
恩義は感じるがそれで行動を曲げることはしない。
過去:
前ロッドフロー村長の息子だが、血の繋がっているわけではない。エバンスはもともと孤児だった。魔物に襲われ、故郷を追われたエバンスの両親が親戚の前村長にエバンスを託した。
・村の赤鳴職人
マリンダ
村の赤鳴を整備する職人。
自分も職人として未熟であると自覚しているからこそ、同じ立ち位置のシーリアには何かと気にしている。
マリンダと赤鳴:
『赤鳴』はもともとマリンダの祖父が製作したものであり、マリンダは幼い頃から祖父と父と共に『赤鳴』を整備していた。家族の絆と同じものを『赤鳴』に感じており特別な感情を抱く。26歳 女性。
・村の子ども
アイラ
アイラはまだ幼い子供。
2年前に両親を亡くして、それ以来親戚のマリンダたちと共にいる。
マリンダとエリオットが親代わり。
まだ何も分からない子供である。
6歳 女性
・村の衛兵
エリオット
エリオットは村の衛兵。
受け継いだ手の器用さで村のいろんな備品を修理したりする。
姉とマリンダと姪のアイラに頭が上がらない。
時として魔物と相対する職業をこなすエリオットにとって、いついかなる時でも選択を迫られる心構えを常に持っている。その中でも第一にしているのは姉のマリンダと姪のアイラの身の安全。常に2人の事を優先して、それ以外のことはたとえ自分の命だとしても二の次にする覚悟を持っている。
21歳 男性
◯世界観
⚪︎惑星
『テラリシア』
それはこの世界を指す言葉
「偉大なる獣たち」が住まいそして去っていった残滓の世界。
または「聖火」による再生が繰り返される輪転の世界。
または人間が抗うことを宿命づけられた試練の世界。
テラリシアはこの世界を指す言葉でもあり、この惑星を指す言葉でもある。
⚪︎ 大陸
『モールミニア』
テラリシアの北半球に位置する巨大大陸。
二つの大陸が衝突して形成されたような構造で、中央を南北に貫く巨大な山脈が存在する。
山脈の尾根部は年中雪に覆われており、東西の交通を困難なものにしている。
山脈を越えるには北ルートの海沿いを渡るか、南ルートの広大な森を抜けるか、険しい山脈の山間の道を通るかしかない。
別の大陸への玄関口は北東にある。
その一帯は都市国家「リーヴィル」が治めている。「リーヴィル」の西に位置し北ルートを独占しているのが同じく都市国家「ヴィルヘルム」そして、山脈の西側にある都市国家「アガム」は豊富に存在する採掘資源で財をなす。この3国は都市国家同盟を結んでおり交易ルートを構築している。
大陸の南東部には聖火教領「ファラウン」が存在する。
そこから南西にかけては聖火教の管理下にある集落が点在する。
大陸の中央は山脈を中心に濃い瘴気が漂う人の侵入を拒絶する空間となっている。
⚪︎国家
・都市国家『ヴィルヘルム』
モールミニア内陸に位置する要塞都市国家。北ルートを中心に交易圏を形成。軍事と防衛に優れる。冷涼な気候。交易に栄える北部に対して南部は森が広がる。瘴気があまり流れてこない人が生きていける森である。
○村
『ロッドフロー』
ヴィルヘルムの南に位置する森の中にある村。『コリンとシーリアの訓練場』
ロッドフローの西にあるシーリアとコリンの訓練場。
◯用語
⚪︎偉大なる獣たち
かつてこの世界を支配していた獣たちの総称。
巨大な体躯と果てしない叡智を携えたが覇権争いの末にその殆どが絶命した。
その骸は世界各地に点在しており、瘴気という毒素の発生原因となっている。
聖火教の主神「フェニックス」もこの1柱である。
誘導士の尻尾も獣たち由来のものである。
⚪︎誘導士
尻尾の力を受け継ぎ、魔物の大移動を制御する役割を担う者。
獣の耳と尻尾を生やし瘴気に耐性を持つ。その力は後天的に発生する。
耳で瘴気を捉え、尻尾から魔物を誘引する瘴気に似た性質を持つ光を作り出すことができる。
誘導士の多くは系譜で力を継いでおり、尻尾に刻まれた記憶や意志を引き継ぐことでその力を扱う。一方で、記憶に呑まれたり、暴走を起こす危険も常に抱えている。
⚪︎誘導
魔物の大移動を尻尾の力を用いて別方向へ導く行為。
瘴気の流れに干渉し、魔物の本能的な動きを抑えながら、街や村を守ることを目的とする。
⚪︎瘴気
大地に染みついた毒素。
かつてこの地に存在した「偉大なる獣たち」の死骸や戦の痕から生じたとされる。
瘴気は空気・水・風に混じって拡散し、各所にホットスポットを形成する。
長く触れることで、動植物や人間を変質させる力を持つ。
ホットスポットに瘴気が集まり臨界を迎えると、周囲に“指向性の瘴気”を拡散させる。これを『大瘴気』と呼ぶ。
これにつられる形で魔物が大移動を開始し、人間社会に甚大な被害をもたらす。
尻尾もまた、元を辿れば「偉大なる獣たち」の死骸から発生した瘴気によって人間に植え付けられた力である。
一時的な瘴気に当てられても人体に影響を及ぼすことはないが、一度に大量の瘴気を浴びると瘴気酔いという状態になることがある。
⚪︎赤鳴(あかなり)
ロッドフローの鐘楼台に設置されている鐘。
瘴気に反応して震え、鐘を鳴らして知らせてくれる。
瘴媒石を特定の位置に混ぜ込ませてあるため瘴気に反応する仕組み。音の波動は、そのまま多少の瘴気を払う効果もある。
⚪︎ 聖火教(作中登場なし)
不死鳥フェニックスを信奉する宗教。
不死鳥フェニックスも獣たちの1柱であり唯一の生き残り。人間に獣たちの死骸から発生する瘴気や魔物から身を守れる様にと自身の炎を分け与えて、自身は新たな争いの火種になることを危惧し何処かへ飛び立った。現在は、幻の存在と思われるほど行方知れずとなっている。
⚪︎ 魔物
瘴気に当てられて変異した存在。
元は動物や人間であったが、その形を保ったまま異様な姿へと変貌している。
個体ごとに異なる性質を持ち、理性はなく、瘴気の濃い場所を本能的に目指して移動する。
それは魔物という存在が不安定であり、瘴気を取り込んで姿や性質を変化させ、安定した形へと至ろうとするためである。
その不安定さが魔物の凶暴性にもつながっている。
誘導によって進行方向を逸らすことはできるが制御を誤れば興奮・暴走し甚大な被害をもたらす。
その皮膚は急速に新陳代謝を繰り返すように捲れ上がり、身体はボコボコに膨れ上がっている。常に熱を持ち、湿り気を帯び、蒸気を漂わせている。蒸せるような異臭を放ち、悶絶に似た叫び声をあげる。
その姿は個体によって様々だが共通点としては、眼球であったところは潰れて空洞には黒い光沢を放つ膜が張られている。