あらすじ
「……お前、本当に馬鹿だな」
異世界へ転移した料理人ケンジが最初に出会ったのは、王国騎士団を追われた元女騎士レオナだった。
部下を守った罪を一人で背負い、名誉も居場所も失った彼女。
もう二度と誰かのために剣は振るわない――そう決めていたはずなのに、魔物に襲われる見知らぬ青年を見つけた瞬間、身体は勝手に動いていた。
助けられたケンジが差し出したのは、お金でも宝石でもない。
一皿の温かい料理だった。
「助けてもらったので、お礼です」
その料理は、不思議なスキル【異世界食堂】で作られたものだった。
どこにでも食堂を呼び出し、日本の厨房で料理を作れる唯一の力。
さらに【解体】のスキルによって、未知の魔物さえ極上の一皿へと変えてしまう。
「……こんな飯、初めて食べた」
その日から、二人の旅が始まる。
人を救いたくて料理を作る青年。
人を守りたくて剣を振るってきた元女騎士。
行く先々で出会う人々を料理で笑顔にし、ときには魔物を食材に変え、ときには誰かの人生を救いながら、二人は少しずつ互いにとって"帰る場所"になっていく。
そして旅の終着点は、人間と魔族が何百年も争い続ける"境界"。
「ここに食堂を開けば、敵も味方も同じ料理を食べられると思うんです」
「……相変わらず、お前はお人好しだな」
そう呆れながらも、その食堂を守るために、彼女はもう一度だけ剣を握る。
これは、料理で人をつなぐ青年と、剣で人を守る元女騎士が紡ぐ、世界でいちばん温かい異世界恋愛。