あらすじ
魔王城へ送り込まれた七人目の勇者は、飢えた十一歳の少女だった。
女魔王ネレイアは、少女の聖剣を奪わない。
代わりに温かいスープを差し出し、教会に口封じされかけた父親も救い出す。
そして魔王城には、戦死したはずの歴代勇者六人が生きていた。
彼らは魔王と戦っていない。
子どもの頃に城へ送られ、帰還を契約で禁じられたまま、傷と後悔を抱える大人になっていた。
なぜ勇者には子どもしか選ばれないのか。
なぜ歴代勇者の死は偽装されたのか。
王都を照らす光は、何を燃料にしているのか。
そして、本当に聖剣を使えるのは誰なのか。
次の候補者は百人。
人間領では力の大半を失うネレイアは、元勇者たちの医療、鍛冶、物流、記録、信仰の知識を集め、巨大な制度へ挑む。
だが、誰も殺さないという彼女の方針にも代償は生じる。
正しさだけでは、すべての命を救えない。
魔王を倒す英雄譚を反転させ、子どもに押しつけられた役目と責任を大人たちが引き取っていく、制度解体ファンタジー。