あらすじ
婚約破棄を告げられたその夜、わたくしが見ていたのは、彼の指に嵌まった指輪でした。——二年前、わたくしが組んだものです。
王都に出回る指輪の八割は、オルスト工房の作。そのほとんどを実際に組んできたのは、工房の娘ミレイアです。けれど刻印に彫られるのは、いつも父の名でした。
石は、嵌めた者の誓いを覚えています。誓いが破られれば曇り、断たれれば光を返さなくなる。——それが分かるのは、その石を組んだ本人だけ。
工房を追われたミレイアは、王都の外れに小さな仕事台を置きました。持ち込まれるのは、誰にも直せなかった石ばかり。そして「直せない」と十一人に言われ続けた石を抱えて、北から来た将軍が戸口に立ちます。
名前を取り戻す話です。奪い返すのではなく、彫り直して。
静かなざまぁと、じれ甘の距離感が好きな方へ。
※主人公は泣きません。声も荒らげません。代わりに、物が語ります。
※恋愛はゆっくり進みます。ハッピーエンド確定。