あらすじ
「獣臭い女を、王妃にはできない」——そう言って婚約を破棄した王太子の騎獣は、その日、わたくしにだけ鼻を寄せてきました。
エルナ・ウィスタリアの魔力は、香りが薄い。貴族としては失格で、幼い頃からずっと「獣臭い」と嗤われてきました。
けれど魔獣たちは、その匂いを「敵ではない」と受け取ります。だからエルナは、彼らが何に困っているのかが分かるのです。餌が合わないのか、寝床が悪いのか、それとも——人間の側が間違っているのか。
追放された先は、魔獣を斬ることしか知らない辺境。エルナはそこで小さな看板を掲げます。「魔獣預かり屋」。
『斬らずに済むかどうか、見るだけなら無料』
討伐隊が匙を投げた黒狼は、彼女の前でだけ、腹を見せました。
一方その頃、王都では王家の騎獣が一頭残らず言うことを聞かなくなっていたそうですが——もう、わたくしには関係のないことですね。
斬るのではなく、診る。ざまぁは遠くで勝手に進みます。
もふもふが懐く話が好きな方、無愛想な男が獣より先に絆されるのが好きな方へ。