あらすじ
「茶なんて、誰が淹れても同じでしょう」——そう言われて婚約を破棄された日、私は王家の茶をすべて調合していた本人でした。
伯爵令嬢ユーフェミアの仕事は、香りで人の状態を読むこと。眠れていない、無理をしている、毒を盛られている——茶葉の配合ひとつで、それを本人に気づかせる。五年続けたその仕事を「趣味」と呼ばれ、彼女は北の辺境へ発ちました。
開いた小さな茶房に、毎朝ひとりだけ客が来ます。三年前の毒で味も匂いも失った、無愛想な辺境伯レオハルト。
一口飲んで、彼は動きを止めました。
「……土の匂いがする。雨の、降ったあとの」
一方その頃、王都では誰も眠れなくなっていて——ですが、それはもう私の仕事ではありません。