あらすじ
公爵令嬢コーデリアは知っている。ここは前世でやり込んだ乙女ゲーム『銀月の誓い』の世界で、自分は学年末の夜会で断罪される悪役令嬢だ。回避策はただ一つ、ヒロインのエマに近づかないこと。ところがそのエマもまた、別の乙女ゲーム『紅月の恋歌』の記憶を持つ転生者で、「わたしは破滅する悪女だから」とコーデリアを死神のように避けていた。破滅を回避したい二人が、まったく同じ理由で必死に避け合う——そんな空回りの日々は、二人きりで温室に閉じ込められた夜、同時にこぼれた「原作と違う……!」の悲鳴で、音を立てて崩れ出す。
つき合わせてみれば、二冊の攻略本は根っこから食い違っていた。どちらの物語も、この世界のほんの一面を切り取った、よそのお話にすぎなかったのだ。破滅回避同盟を結び、初めての友達になった二人。だが本当の危機は、どちらの攻略本にも載っていない一人の転入生だった——未来を知る力が、まったく通じない相手。物語の外側で選んだものだけが、ほんとうの自分。断罪の夜会が、脚本のない笑い合う夜に変わるまでを描く、心温まる読み切りです。