あらすじ
朝。とある寺の倉。重い扉が軋みながら開き始めた。
床に伏せていた男は、その音で目を覚まし、ゆっくりと顔を上げた。
「うっ……」と短く呻き、差し込んだ朝の光に目を細める。眩しさに滲む視界の中、入り口に立つ人影は逆光で黒く塗り潰されて輪郭が曖昧に溶けていたが、目が慣れてくるにつれ、その姿は徐々に形を現わしていった。
袈裟を着た初老の男だった。両手を前に組み、倉の中へ一歩足を踏み入れた。
「どうじゃ、気分は」
和尚は厳かに言った。
低く落ち着いたその声は、静まり返った倉の空気をゆるやかに震わせ、男の耳から脳髄の奥まで重く響いた。