あらすじ

市役所の地下にある遺失物保管室。そこには、持ち主が現れなかった傘や財布と一緒に、「誰のものだったのかさえ分からなくなった物」が保管されている。 配属された新人職員・朝倉悠真は、初日に一つだけ奇妙な決まりを聞かされる。 「四十九番の棚だけは、絶対に開けるな。」 ある雨の夜、地下室に一人残業していた悠真は、棚の奥から小さく何かを叩く音を聞く。 ―コン、コン その音に導かれるように四十九番を開けた瞬間から、彼の日常は静かに壊れ始める。 家族の顔が思い出せない。 親友の名前が口から消える。 そして、自分が写っているはずの卒業写真には、いつの間にか知らない空席ができていた。 四十九番に保管されているのは、落とし物ではなかった。 それは、この世界から忘れ去られた人間の「存在」そのものだった。 地下室では今夜も、誰かが小さく棚を叩いている。 「ここにいるよ」と。

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カクヨム
カクヨム2026/07/23
  • 現在の作品遺失物保管室の、四十九番