あらすじ
まだ何も、色を持たない世界があった。
秩序と混沌がせめぎ合う狭間から生まれた「理」に導かれ、神々に仕える使徒たちが次々と地上に降り立ち、思い思いの色を混ぜて
子どもたちを生み出していく。力強さを求める者、統率を求める者——誰もが複数の色を欲張る中、ただ一人、青年ヴェルドだけは澄
んだ知恵の色一色だけを選んだ。
生まれたのは、剣も振れない、炎も呼べない、ひどく華奢な子どもたち。後に「ノーブル」と呼ばれることになるこの種族は、力に
おいては世界最弱と言っていい。それでもヴェルドは誓う——この子たちを、二度と一人にはしない、と。
草原を追われ、森を見つけ、屋根を作り、火を熾す。知恵と、譲り合いと、軽口だけを頼りに、弱き者たちは少しずつ、確かな暮ら
しを積み上げていく。
だが、記録係の少年セトが石板に刻み始めたこの物語には、まだ誰も知らない続きがある。父から子へ、その子からまた子へ——四代
にわたって受け継がれることになるこの記録の奥には、いつか語られる日を静かに待つ「真実」が眠っている。
最弱の種族が、なぜ、四代の時を経てなお語り継がれる物語になったのか。