あらすじ
嘉吉元年六月二十四日、六代将軍・足利義教は赤松邸の宴で首を打たれた。誘い出した口実は「鴨の子を見に来ませんか」。皇族に「将軍かくのごとき犬死、古来その例を聞かず」と日記に書かれた、日本史上もっとも間抜けな最高権力者の死である。
だが、もし——十三年間、万人を疑い続けた男が、その猜疑心ゆえに初太刀をかわしていたら?
くじ引きで選ばれた元・天台座主。「万人恐怖」と怖れられた粛清将軍。返り討ちの夜、義教は命じる。「赤松は根切りにせよ。……今日この座にいた者の名を、すべて書き出せ」
生き延びた独裁者は、守護大名の粛清を完遂し、強すぎる室町幕府を作り上げていく。応仁の乱は起こらない。つまり——戦国時代が、来ない。信長より百年早い天下布武、開幕。