あらすじ
『ふざけんな!!』
直後にくる頬の鈍い痛みに泥に塗れて汚れる小学生が着るような小さなタキシードの布。
「おい!いつお前が前に出て良いって言ったか?ここでのピアニストの扱いは、ただの第2,第3のメトロノーム係なんだよこのドアホが」
会場の裏で行われる教育という名の暴力。
大した演奏もできないこいつはいつも俺に責任を押し付けて、自分のソロのダサさを泥水で拭うようにして拳を振るう。
僕は、そんな落ちぶれた父に対してもうなんの感情も持てなくなっていた。
そして、ある日に見限ったと言われ捨てられた僕は、タキシード姿のまま高架下で2日がすぎた。
空腹と寒さでぼやける目は、目の前に立つ女を捉えて、女は話しかけてきた。
「君、私の先生になってよ」
空腹と突然のことで訳がわからないままそいつを眺めていたら、袋から出されたハッシュドポテトをただ奪い取ってただ咀嚼した。
目一杯頬張る僕を見た女は、満足そうに言った。
「私の名前は萩宮響子。よろしくね野良犬くん」
僕は、こいつの先生になった。