あらすじ
応永十五年五月六日、足利義満、死去——というのが正史である。
太政大臣を極め、明の皇帝から「日本国王」に封じられ、妻を天皇の准母とし、息子を親王のごとく元服させた男。その死の直後、朝廷は義満に「太上天皇」の号を贈ろうとした。皇位に即いたことのない人間を、上皇として遇する。あと一歩、だったのだ。
この物語では、義満は病の床から生還する。
そして快癒の朝、真っ先にこう問うた。「践祚とは、いかなる式次第で行うものか」——死んでから贈られるはずだった玉座を、生きて取りにゆくために。
将軍職を持つ息子・義持との父子相剋、天皇家の逆襲、そして寵愛と冷遇の間で権力の頂を見つめ続ける世阿弥の目。武家は、王になれるのか。日本史最大の禁忌に挑んだ男の、もう一つの応永を描く歴史改変小説。