あらすじ
親の転勤で引っ越しを繰り返し、「別れ」に慣れきってしまった高校1年生の浅葱帆乃(あさぎ ほの)。
どうせまた手放すことになるのなら、最初から誰とも深く関わらない方がいい。
傷つくことを恐れた彼女は、自らの感情に「分厚い蓋」をし、無害な傍観者として生きることを決めていた。
手元にあるのは、何も描かれない真っ白なキャンバスだけ。
転校先の潮見町で、帆乃は図書委員の先輩・久我峰夕那葉(くがみね ゆなは)と出会う。
誰に対しても優しく、完璧な微笑みを浮かべる夕那葉。しかし、他人の機微を観察し続けてきた帆乃は、その笑顔の奥に自分と同じ『冷たい孤独の影』が隠されていることに気づいてしまう。
「踏み込んでこない」適度な距離感の中で、少しずつ心を通わせていく二人。
しかし、夕那葉は「眩しい時間」を知ってしまったがゆえに、いずれ訪れる『別れ』に激しく怯え、逃げ出そうとしていた。
かつて、傷つくのが怖くて自分から繋がりを絶ってしまった過去を持つ帆乃。
目の前で暗い水底に沈もうとしている夕那葉の姿に、帆乃はずっと押し殺してきた自らの感情をついに決壊させる。
「私みたいに、全部無かったことにして逃げるの!?」
言葉の代わりに筆を握り、真っ白だったキャンバスに『本当の心』を叩きつけた時、止まっていた二人の時間が再び動き出す――。
本編『記憶の轍~nostalgic blue~』の裏側で紡がれる、もう一つの救済と軌跡の物語。