あらすじ

神聖なる光も、雷を纏う英雄の剣も、この泥濘の底には届かない。 「魔力を持つ者(貴族)」が絶対的な権力を握り、「魔力を持たぬ者(平民)」が肉壁や奴隷として無惨に使い潰される理不尽な階級社会。  エストゥーラ王国の辺境で暮らしていた13歳の少女エルマの平穏は、アルメキア軍の侵攻によって唐突に奪われた。 両親を「肉壁」として最前線へ送られ、自身も奴隷商人への荷馬車に詰め込まれたエルマ。  しかし、護送中に凶暴な魔獣の群れが馬車を襲撃。絶望的な殺戮の中、エルマは他人のまだ温かい血を顔に塗りたくり、死体の山に潜り込むことでただ一人、奇跡的に生き延びた。 「強大な魔力を持っていようと、死ねばただの肉の塊だ」  泥と血に塗れながら這い上がった彼女は、英雄に救いを求めることをやめた。 頼るべきは、生き汚いまでの絶対的な生存本能のみ。 彼女は裏社会の「掃除屋」として過酷な日々を生き抜いていく。  魔力が微弱であることを逆手に取り、貴族の魔力探知をすり抜ける圧倒的な隠密性。 旧時代の火薬銃やジャンク品の魔導器、そして猛毒と罠。 正面からは絶対に戦わず、相手の魔力が底を突くのを泥水の中でひたすら待ち、その喉笛を無慈悲に掻き切る。  これは、英雄たちが華やかに空を駆ける遥か足元で、ただ命を繋ぐために這いつくばり、傲慢な強者たちを泥濘へと引きずり下ろす『持たざる者』の過酷な生存競争(サバイバル)の記録。

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カクヨム
カクヨム2026/07/23
  • 現在の作品光の届かぬ世界で、少女はただ生存る。