あらすじ
伯爵家の長女エレナは、母の死後、義母と義妹に使用人同然の扱いを受けていた。 父は見て見ぬふりをし、母の遺品は義妹ロザリアのものとなり、エレナに残されたのは朝から晩までの労働と、誰かの食べ残しだけだった。
ある日、義妹の引き立て役として王宮の夜会に連れ出される。 与えられたのは母の古い喪服と、義妹が捨てた合わない靴。 王太子アレクシスはロザリアを選んで踊り、エレナを見て笑った。
――けれど、壁際に立つエレナへ声をかけた女性がいた。 亡き母の友人、オルレアン伯爵夫人マリアンヌ。 彼女は母が遺した財産の存在を告げ、エレナをあの家から連れ出す。
温かい食事。自分のために作られた服。痛くない靴。 「あなたはどうしたいの」と尋ねてくれる人。
一か月後、再び夜会に立ったエレナを見て、王太子は今度は彼女を選ぼうとする。 「君こそ、私の隣にふさわしい」と。
けれどエレナは知っていた。 殿下が選んだのは「私」ではない。見栄えのする女へ選び直しただけだ。
痛いものを痛いと言い、嫌なものを嫌だと言い、自分に合う靴を自分で選べるようになった今――
「お断りします」