あらすじ
「温めますか」——それは、私が世界でいちばん口にしてきた言葉。
相沢灯里、三十二歳。深夜のコンビニを一人で回すベテラン店員。客の“いつもの”は全部覚えているのに、自分だけは「もう賞味期限切れ」と決めつけて、閉店後の暗い店で廃棄弁当を食べている。そんな灯里の店が、再開発で消えることになった。
店を継ぐ資金がほしくて、灯里は場違いを承知で恋愛リアリティショーに挑む。制作の狙いは、彼女を“早々に脱落する庶民枠”に据えること。けれど灯里は、コンビニ仕込みの「単品管理」で、型に押し込められた参加者を一人ずつ“その人”として見抜いていく——。
型で人を値踏みする番組の中で、たった一人、灯里を“単品”として見てくれた無愛想な男・冬川。彼には、灯里だけが知らない秘密があった。
賞金か、たった一人か。誰かを冷やして手にする温かさなんて、いらない。
販売期限を決めているのは、いつだって売る側だ——。
コンビニ店員の職能がとことん光る、大人のお仕事×恋愛ヒューマンドラマ。全二十二章。