あらすじ
夜、とあるバー。開店して間もない頃だった。客はまだ数人しかおらず、奥のテーブル席に座っている。照明の光が店内を柔らかく照らし、かすかな話し声が空気に溶けていた。
そこへ一人の男が入ってきた。
男は入り口で立ち止まり、店内を軽く見渡した。それから気だるそうな足取りでカウンターへ向かい、真ん中あたりの席に腰を下ろした。カウンターには他に客はおらず、この席を選んだのはマスターから――酒から――近いという理由だけだった。
男は背中を丸め、肩を落として長いため息を吐いた。やや間を置いて顔を上げると、マスターに低い声で酒を注文した。
やがて酒の入ったグラスが差し出された。それとほぼ同時に男はグラスを掴み上げ、そのまま一気に喉へ流し込んだ。
喉仏が大きく上下し、氷がからりと音を立てた。
男は鼻から息を吐き出し、空になったグラスを静かにカウンターに戻した。
「もう一杯……いや、ボトルごと頼む」
「かしこまりました」
『やめられないんだ……』