あらすじ
海に囲まれた島国、神聖デルフサレム帝国。
この国では聖帝が統治の正統性を授け、棟梁府と諸侯が武力と政を担っていた。
誰もが「聖帝」と呼び、膝をつく少女を、彼だけは幼い日の名で「シア」と呼ぶ。
有力領主リファイン家の嫡孫ライゼルは、十六歳の元服を前に聖都へ上り、幼馴染イクルシアと再会する。
幼い日、二人は聖樹の庭で初穂の御稲を分け合い、
「いつか一緒に海を見よう」
と約束した。
だが、かつての少女は今や、誰も私情で近づくことのできない帝国最高の権威者――聖帝となっていた。
公の場では臣下と君主。
二人きりの時だけ、「ライ」と「シア」。
やがて若き棟梁の死をきっかけに、帝国は二人の正統な後継者をめぐって分裂する。
追放された正統棟梁。
聖都に立つ現職棟梁。
勅命と官位を握る宮廷。
独自の正義と領民を背負う地方領主たち。
誰が正しいかだけでは、国は動かない。
正統性だけでも、武力だけでも、天下は治められない。
ライゼルが戦場へ持ち込むのは、剣だけではない。
港、船、兵糧、銀、商人の信用、同盟、婚姻、官位、勅命、そして敗者の居場所を残す制度。
聖都奪還、領地経営、海峡外交、奉戴上洛、群雄割拠、天下統一。
勝利するほどライゼルとイクルシアの公的な距離は広がっていく。
それでも二人は、互いを守るのではなく、互いの決断を信じられる統治者へと成長していく。
ライゼルが作ろうとするのは、聖帝を力ずくで連れ出せる国ではない。
イクルシアが自分の意思で聖都を出て、幼馴染の隣に立ち、海まで歩いていける国である。
【こんな読者におすすめ!】
・主人公補正ではなく、兵站・財政・信用・制度で勝つ戦記が好き
・敵にも正義と支持者がいる群像劇が好き
・恋愛と政治が切り離されていない幼馴染ものが好き
【時代モデルは「応仁の乱」後の「室町時代前半」です】
【第一章完結/第二章へ続く】