あらすじ

夫の誕生日、私はケーキを抱えて彼の会社を訪れた。

 社長室の扉はわずかに開いており、中から妹の星羅の声が聞こえてきた。

「次順位受益者の資格放棄書、どうしてまだ署名させていないの?」

 直哉が苛立った声で答えた。

「あと数か月待て。子どもが生まれたあとで紫乃に事故が起きれば、父親の俺が子どもの信託財産を管理できる」

 短い沈黙のあと、星羅の声が氷のように冷えた。

「でも、その子が生きている限り、私は九条家で唯一の後継者にはなれない」

 扉の外に立ったまま、手の中のケーキが少しずつ傾いていった。あの二人が欲しがっていたのは、私の結婚も株式も、それだけではなかった。

 私と、お腹の子の命まで奪うつもりだったのだ。

 録音ボタンを押し、私は東華都の雨の中へ引き返した。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/07/22
  • 現在の作品夫と偽令嬢に殺害計画を囁かれているのを聞いてしまったので、返り討ちにして二人とも地獄へ送ることにしました