あらすじ
同じ道を歩く人もいれば、ほんの一瞬だけ交差する人もいる。名前すら知らないまま、すれ違っていく人もいる。
人生のどこかで交差した人々の断片から描く物語。
十二月のある冬の夜。
アパートの隣室から聞こえてくる、子どもの泣き声。ナカノはその子の名前も、どんな家庭で暮らしているのかも知らない。ただ、何度も聞こえてくる泣き声と怒鳴り声に、とうとう警察へ電話をかける。ナカノにとっては、それだけの出来事だった。その後、少女はアパートを引っ越していく。ナカノもまた、自分の生活へ戻っていく。けれど、少女の人生には、その後もさまざまな人が現れ、そして物語は、別の人の世界へ移っていく。
家族。
学校の先生。
友人。
人生について語る大人。
夢を追う中で出会った人。
そして母。
それぞれの人が知っているのは、少女の人生のほんの一部分だけ。
誰かにとっては、忘れられない子。
誰かにとっては、孤独な子。
誰かにとっては、夢を追いかけるひとりの人間。
そして、誰かにとっては、かけがえのない娘。
同じ一人の人間なのに、見る人によって、その姿は少しずつ違っている。
人は、生まれ育った環境だけで決まるのだろうか。誰かとの出会いは、その人の人生を変えるのだろうか。それとも、変わったように見えるだけなのだろうか。
生まれ育った環境は、人の心にどこまで影響するのか。
人は、自分の生まれ持った性質によって決められているのか。それとも、出会いや偶然によって、何度でも変わっていけるのか。
孤独について。
家族について。
命について。
夢について。
そして、この広い宇宙の中で、なぜ人は誰かと出会うのか。
人生の中で出会う人々は、必ずしも自分の人生を大きく変えるわけではない。それでも、その人が生きていた世界のどこかに、自分の姿が一瞬だけ存在していたのかもしれない。もし、人がそれぞれ違う世界を生きているのだとしたら。その世界と世界が交わる場所を、私たちは何と呼ぶのだろう。そして誰もが、自分だけの世界を生きながら、誰かの世界の片隅にいる。パラレルワールドの交差点で。