あらすじ
国家の電力をつかさどる基盤へ、姿を持たない者が忍び寄る。
防壁を力任せに打ち破るのではない。
組織が構築したゼロトラストの仕組みを、内側からそっと通り抜ける。
誰にも頼らぬまま孤立を深めた設計者の、心のほころびを突く手口である。 表向きには、誰もが目を奪われる機能停止を引き起こす。
その陰で、電力の需要予測をわずか一・五パーセント狂わせる仕掛けを、中枢の工程へ滑り込ませていた。
目的は設備の破壊ではない。
狂った予測がもたらす燃料の買い足しを利用し、市場の決済を操作する算段である。 組織の目が大きな炎に向けられるなか、夜勤の監視員が静かな足音を見つけ出す。
監視員は、みずからの権限と知識が足りない事実を認める。
そして、罠に落ちた設計者を呼び戻し、ともに事態の収拾へあたる道を選ぶ。
ばらばらに分たれたひととひととが再び手を結び、盤石な防壁を取り戻すための作業へ着手する。