あらすじ

十一歳の冬、伯爵令嬢エリシアは、死にかけた弟を救うため、自分自身を魔法の計算へ組み込んだ。 弟は助かった。代わりに彼女の世界から一度色が抜け、自分の痛みを数える感覚まで遠のいた。 倒れた彼女を抱き留めた幼馴染ヴァレリウスは、ただ一人、その奇跡を喜べなかった。 次は必ず間に合う。 彼女が自分を数えないなら、俺だけは取り落とさない。 そう決めた。 七年後。 世界の|理《ことわり》さえ解く天才に育ったエリシア。けれど、その内側は少し危なっかしい。 外から見れば、紫銀の髪を持つ完璧な淑女。なのに食事を忘れ、皮肉を褒め言葉として受け取り、平らな廊下でつまずきかける。自分の感情はいつも「未分類」のまま、後回しだ。 そんな彼女が、国を守る古代の聖域に、六百年間誰にも直せなかった欠陥を見つける。 それを直せば、祈祷師代理として痛みを負う婚約者ヴァレリウスを、その役目から解放できる。 だから彼女は、彼には内緒で聖域の改修を始めた。 一方のヴァレリウスも、彼女を怯えさせず治療へ導くため、身体に起きている異変を、本人に知らせないまま準備を進めていた。 彼女が食事を忘れれば、菓子を差し出す。つまずく前に、そっと支える。何も知らない顔で微笑む、完璧な婚約者。 けれど、その優しさの奥には、七年前の恐怖と、彼女を救うための秘密がある。 互いを守るため、互いに黙って無理をする二人。 聖域の改修が進むほど、エリシアの味覚は苦みに侵され、身体の異変も深まっていく。やがて神殿は彼女を「女神の器」と呼び、美しい聖域へ囲い込む。 世界は彼女を、救済のための部品として求める。 それでもヴァレリウスだけは、その世界を欺いてでも、彼女を一人の人間として連れ帰ると決めていた。 世界を救えるのに、自分が愛されていることだけ分からない天才令嬢と、七年越しの初恋を隠してきた完璧な婚約者の、甘く切ない相互救済ファンタジー。 前半はエリシア視点、後半はヴァレリウス視点。 同じ季節を二つの心から辿り、彼の優しい嘘と「赤い雫」に隠された真実を明かします。 ※完結まで執筆済み/ハッピーエンド

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/07/22
  • 現在の作品世界を救える天才令嬢は、自分の救い方だけを知らない ~七年越しの初恋を隠す完璧な婚約者は、彼女だけを取り落とさない