あらすじ
ヴァイツグラード帝国は、国土を呑み込み続ける異界領域〈黒き森〉に追い詰められていた。
正規軍も騎士団も、森の瘴気と魔物には抗えない。
そこで帝国が始めたのが、異世界から人間を召喚し、勇気を糧に動く聖誓鎧へ詰め込み、黒き森の奥へ射出する〈勇者射出計画〉だった。
十一人目として召喚された青年は、剣の達人でも、英雄でもない。機械いじりが多少できるだけの、臆病で平凡な学生だった。
選択の余地も与えられないまま十一号機へ装填され、盛大な祝福と歓声に送られて、彼は黒き森へ撃ち込まれる。
帝国から告げられたのは、先に射出された十人の勇者は全員死亡したということ。
だが、森の中で彼が見つけたのは、魔物の死骸でも勇者の墓でもなかった。
砦を築いた消防士。
魔物の生態を解析する引きこもり。
瘴気を焼き払う工場保安員。
樹冠を渡る弓道少年。
負傷者を救い続ける看護学生。
道を切り拓く土木作業員。
死者を弔う納棺師。
鎧を直す整備士。
騎士たちを束ねる旧家の青年。
そして、森の深部で防衛線を維持する夜勤警備員。
十人は、誰一人として死んでいなかった。
彼らは英雄としてではなく、それぞれが元の世界で培った知識と技術によって、黒き森を生き延びていたのだ。
十一発目の弾丸に課せられた使命は、魔王を倒すことではない。
帝国に捨てられた十人の勇者を見つけ出し、黒き森から生還させること。
これは、勇者を消耗品として撃ち続ける帝国と、勇者であることを拒んだ十一人の異世界人による、生存と帰還の物語。