あらすじ
登場人物の紹介/あらすじ
【登場人物】
◆ともみ
港町・河和にある海風茶楼を切り盛りする料理人。祖母から受け継いだ茶楼と、決して開かない漆の箱を守っている。穏やかに見えて芯は強く、料理を通じて人の言葉や記憶を引き出していく。
◆龍来
都から河和へ戻ってきた巡検見習い。地図や文書を重んじる生真面目な青年だが、結論を急ぐ癖がある。ともみの料理と町の人々に触れ、書類だけでは見えないものを学んでいく。
◆未波
河和の名家の娘。町の評判と人々の暮らしを守る立場にあり、保護区をめぐる問題を公にすることへ迷いを抱える。
◆貴道
家格や席順を重んじる旧家の人物。保護区の整備を支持しているが、その態度の裏には、長く隠してきた記憶と後悔がある。
◆海風茶楼の人々
手紙を愛する美沙稀、行動を整理する祥奈、噂を集めるこのみ、馬場を守る椋太など、河和で暮らす人々。料理を囲みながら、それぞれの記憶を持ち寄っていく。
【あらすじ】
海辺の町・河和で、祖母から受け継いだ海風茶楼を営むともみ。
彼女のもとへ、保護区と売却予定地の境界を調べる巡検見習い・龍来が現れる。挨拶より先に地図を広げるほど生真面目な龍来だったが、ともみが出した苦瓜味噌のお通しを、なぜか毒見用の証拠品だと勘違いしてしまう。
調査を進めるうち、役所の地図には異なる二本の境界線が存在することが判明する。さらに、開かない漆箱、祖母へ宛てられた恋文、幽霊屋敷と呼ばれる古い見張り屋敷、風の中で規則正しく鳴る方位標識が、失われた土地の約束へとつながっていく。
証拠を求めて走り出す龍来と、料理を出して人の言葉を待つともみ。
正反対の二人は、苦いお通しと温かな朝粥を囲みながら、町の人々が守ってきた記憶を一つずつほどいていく。
しかし、土地を狙う商人の影が迫り、龍来には都へ戻るよう命令が届く。
守るべきものは、地図に引かれた境界線なのか。
祖母が箱と献立帳に隠したものは何なのか。
そして、ともみの胸に残る苦味は、いつから恋へ変わっていたのか。
料理が記憶を呼び起こし、不器用な恋と町の秘密をほどいていく、