あらすじ
高校二年生の音無透真は、幼い頃から幽霊を見ることができた。
幽霊と話すこともできる。
そして透真には、もう一つだけ、誰にも知られていない能力があった。
幽霊同士の会話を聞くことができるのだ。
ただし、死者同士の言葉は、人間の声としては聞こえない。
壁を爪で引っかく音。
誰もいない廊下を歩く足音。
鳴るはずのない電話。
止まった風鈴。
遠くで繰り返される踏切の警報音。
それらの音に交じって、死者たちは会話をしている。
怖がりな透真は、できる限り幽霊と関わらずに生きてきた。
しかし、亡くなった祖母から言われた言葉だけは忘れられない。
「死んだ人が怖いんじゃない。誰にも届かない言葉のほうが、ずっと怖いんだよ」
透真は、死者が残した最後の想いを家族や友人へ届けるようになる。
謝罪。
感謝。
告白。
誰にも発見されていない遺品の場所。
自分を殺した人間の名前。
死者の言葉を届けるたび、透真は少しずつ恐怖と向き合っていく。
そんな夏の夜、午前零時十三分。
町内放送のスピーカーから、存在しないはずの女性の声が流れる。
『明日、こちらへ来る方のお名前をお知らせします』
放送が読み上げたのは、透真の同級生・早坂澪の名前だった。
翌日、学校に現れた澪は生きていた。
ところが放課後の教室で、二人の幽霊が澪を見ながら話している。
「この子、まだ自分が死ぬことを知らないんだね」
「明日の午前零時十三分には、僕たちと話せるようになるよ」
そして澪の背後には、彼女と同じ顔をした幽霊が立っていた。
透真は、死者の想いを届けるため、そしてまだ生きている澪を死者の会話から取り戻すため、十三年前に途絶えた町内放送の秘密を追い始める。
だが、調査を続ける透真の耳にも、少しずつ異変が起こる。
生きている人間の声が遠くなり、死者たちの声だけが鮮明になっていく。
やがて幽霊たちは、透真本人の知らないところで話し始める。
「もうすぐだね」
「ようやく、この子にも伝えられる」
「音無透真が、本当はいつ死んだのかを」