あらすじ

近藤裕一は、新宿の交差点で立ち止まった。午後三時。曇り空がビルの谷間に重く垂れ込めている。彼は左手に、今日の出張先で買ったばかりの手土産の箱を持っていた。妻・優奈が好きな、銀座の老舗のケーキだ。 久しぶりの早い帰宅だった。彼は足早に家路を急ぎながら、スマホで優奈にメッセージを送った。 「今から帰る。ケーキ買ったよ。」 既読はすぐについた。しかし、返信はなかった。 その時、彼は向かいの歩道に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。優奈だった。彼女は何かを隠すようにうつむきながら、灰色のビルの陰へと入っていく。その隣には、スーツを着た男の姿があった。 裕一は、そのビルがラブホテルであることを知っていた。彼は、その場で固まった。手土産の箱が、地面に落ちた。 それが、すべての始まりだった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/07/22
  • 現在の作品花の咲くまで