あらすじ
西暦2969年、外環評議会は予算不足に苦しむ宙軍と機構の思惑を「西暦3000年記念事業」の名の下に統合し、太陽重力レンズ望遠鏡群を750天文単位へ運ぶ新造艦GL-01「ヒルベルト」の建造を承認する。西暦2974年、艦は巡航速度145km/s、往復ΔVおよそ600km/sという規格外の航行計画を背負って出航した。片道二十五年、コールドスリープに眠る乗員たちを乗せ、艦は太陽系の外縁を越えていく。
西暦2999年末、艦は目標軌道に到達し、十四基の観測機を展開する。西暦3000年を迎える瞬間、評議会本部に届いたのはプロキシマ・ケンタウリbの初結像——期待された「もう一つの地球」ではなく、全球を氷が覆うスノーボールアースの姿だった。艦長・東堂ならぬ周防航と主任研究員・日向蒼は、なお続く復路二十五年を前に、ヒルベルトが遺したという「千年の眠りから目覚めたら」の言葉を、静かに思い返す。