あらすじ

施工班に、高額の仕事が入った。
 内容は、ごく普通の分譲マンションの一室に「葬祭用品サンプル保管室」を作ることだた。
 責任者は、最初、住所の入力ミスだと思ったらしい。けれど工具を抱えて現場に来たとき、私が本気だとようやく理解した。

 理由は単純だった。同じ階の斜め向かいに住む女が、靴箱、古い収納棚、ゴミ袋を共用廊下いっぱいに並べ、私の玄関前まで占拠していたからだ。扉を開けるたび、こちらが身を縮めなければならないほどだった。

 私は、ここは火災時の避難経路だから私物を置かないでほしいと伝えた。

 すると彼女は、目だけで人を踏みつけるような顔をした。

「管理費はうちも払ってるのよ。共用部分なら、私にも使う権利があるでしょ。賃貸暮らしの貧乏会社員が、何様のつもり?」

 その後、私はその部屋を買った。

 同時に、地下駐車場の平置き駐車区画の専用使用権も引き継いだ。

 けれど彼女は、私が出張している間に、自分の赤いレクサスを私の区画へ停め、さらに黄色い車止めまで勝手に取り付けた。

 家に車が多いから少し借りてあげているだけ。

 彼女は、そう言った。

 だから私は、施工班に頼んだ。

 駐車区画の線の内側に、取り外し可能な鋼製フェンスをぐるりと立ててもらった。

 ついでに、自分の部屋を葬祭用品サンプル保管室にした。

 どちらのほうが気味悪いか、比べてみればいい。

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アルファポリス
アルファポリス2026/07/21
  • 現在の作品迷惑隣人が玄関前と駐車区画を占拠したので、葬祭会社勤務の本気で引っ越していただきました