あらすじ
コルセア子爵家の三女アリアは、姉二人が輝く社交界の片隅で、ただ黙々と蜂を飼っていた。
「貴族の娘が蜂いじりなど、みっともない」
両親は呆れ、使用人は遠巻きにし、婚約者の侯爵令息さえも、彼女を「余り物の花嫁」と呼んだ。
ある日、姉の婚約者が別の女と駆け落ちし、家名を守るためアリアが代わりに差し出される。だが侯爵令息は鼻で笑った。「誰が余り物など欲しがるか」
行き場を失ったアリアに舞い込んだのは、王国最北の辺境を治める"冷血公爵"との縁談だった。感情を表に出さず、誰とも心を通わせないと言われる男。
「お前を愛する事はない。だが、公爵家の体裁は保つ」
冷淡な宣言を受け入れ、雪の辺境へ嫁いだアリア。だがそこで彼女が見たのは、荒れ果てた大地と、飢えた領民と――氷の花畑だった。
アリアは知っている。この花は、冬だけ咲く幻の蜜源植物。ここには、誰も知らない宝が眠っている。
彼女が蜂を放った日、辺境の歴史が変わり始める。
そして、冷血と呼ばれた公爵が、初めて――