あらすじ
普通の人間は、梅干しを一日一粒か二粒しか食べない。
だが、数百年に一度、その常識を破壊する者が現れる。
梅干し界には、ひとつの教えがあった。
食べられることは、終わりではない。お弁当箱の中央に至って、初めて存在の意味を全うする。そんな平和な世界に、ある日、「酸喰いの風」と呼ばれる災厄が現れる。
畑ごと、パックごと、姿も見せずに食べ尽くしていく。討伐隊は全滅。塩は勝手に倉庫を接収し、クエン酸はテンション高く営業をかけてくる始末。
「怖いはずなのに、なんか、憎めない話。」
守ることに全力を注いできた梅干し王は、ついに、その者の前に立つ。
――なぜ、そこまで我々を求めるのか。
答えは、拍子抜けするほど単純だった。
「今日は、身体が欲してた。」
好きだから、食べている。それだけだった。守るとは、囲うことだ。囲うとは、支え合うことを、忘れることだ。王は、その言葉の意味を、身をもって知ることになる。
疲労回復。塩分補給。運動後には、なぜかもっと欲しくなる。
――これは、笑って読んでいるうちに、気づけば梅干しの底力を、こっそり布教されている物語でもある。
作者は現役ナースです。念のため。