あらすじ
この国では、選ばれた者が王になるのではない。王に借りた者が、選ばれる。
金融庁の銀行検査官・杠葉冬真(ゆずりはとうま)は、経営破綻寸前の地方銀行を調査するなかで、存在しないはずの勘定科目を発見する。
───特別勘定、王室維持費。
残高は十二兆八千四百億円。
公共事業、政治団体、宗教法人、投資ファンド、芸能事務所、暴力団関連企業。資金は日本社会のあらゆる場所へ分散され、数十年にわたって移動を続けていた。
だが、帳簿と実際の残高には、なぜか一円だけ差額がある。
その直後、銀行の元頭取・四十物宗一(あいものそういち)が本店地下の貸金庫で惨殺される。
切断された十本の指は「借方」と「貸方」に分けて並べられ、口の中には一円硬貨が押し込まれていた。
事件を追う警視庁刑事・九鬼廉介。二十年前に政治家秘書だった父を失った新聞記者・御厨絢子(みくりやあやこ)。政財界の裏取引を知る元極道・百目鬼巽(どうめきたつみ)。歴代総理すら頭を下げる金融界の怪物・薬袋清顕(みないきよあき)。
冬真たちは、やがて日本の裏側に存在する五つの支配網へたどり着く。
金融を支配する「金勘定」。選挙と政権を動かす「票勘定」。暴力と死を扱う「血勘定」。報道と世論を操る「声勘定」。警察と司法を歪める「法勘定」。
五つの勘定が同時に動いたとき、実体を持たない国家の支配者───「僭王」が成立する。
連続する猟奇殺人。仕組まれた銀行破綻。次期総理をめぐる政争。暴力団抗争と情報操作。
それらはすべて、日本の新たな支配者を選ぶための「清算」だった。
僭王を倒せば、日本経済は崩壊する。僭王を残せば、この国は永遠に支配される。
すべての借りを清算する最後の夜、冬真は知る。
僭王とは、どこかに潜む一人の怪物ではない。
誰も責任を取らないために、この国が生み出した王なのだ。