あらすじ

人の心には「心晶(しんしょう)」と呼ばれる結晶が宿り、感情が動くたびに、色と形を変える。心晶鑑定士とは、その変化を読み解き、感情の奥に眠る"本当の願い"を見つける専門職である。 心晶学院に通う実習生リゼ・アルノーは、少し変わった鑑定士見習いだった。同期たちが「赤いから怒り」と教科書通りに感情を分類する中、リゼだけは、その奥にある"願い"を見てしまう。短気だと呼ばれる少年の怒りの奥に、亡くした妹を守れなかった後悔を見出し、笑顔を絶やさない青年の輝きの奥に、諦めきれない夢を見つける。彼女は石を鑑定しない。ただ、隣に座り、最後まで話を聞くだけだった。 だが、そのやり方は、教科書からは大きく外れていた。「感情を裁くな。感情に耳を澄ませよ」――学院の入口に刻まれた創設者の言葉の、本当の意味を知る者は、もう誰もいなかった。 感情を消し去ろうとする国家機関、苦しみを早く終わらせようとする修復師。それぞれの"正しさ"がぶつかり合う中で、リゼは、忘れられた創設者の日記に出会い、三百年前の想いを、今の時代に取り戻そうとする。 けれど彼女には、一つだけ欠点があった。誰の願いも読み解けるのに、自分自身の願いだけは、ずっとわからないまま。 卒業試験――最後の依頼人と向き合ったとき、リゼは初めて、自分自身の心晶と対峙する。そこに眠っていたのは、図鑑にも載っていない、名前のない結晶だった。 「私は、人を救いたかったんじゃない。一人一人が、自分の心を信じられる世界を、作りたかったんだ」 磨かれるのは石ではない。その人自身だ。怒りの奥に眠る、大切なものに気づいたとき、人はようやく、前を向いて歩き出せる――これは、そんな"心を磨く"鑑定士の、始まりの物語。

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カクヨム
カクヨム2026/07/21
  • 現在の作品心晶鑑定士 〜願いは、感情の奥に眠る〜