あらすじ
「記憶ほど信じられないものはない。ひとは簡単に記憶を捻じ曲げる。それは僕だってきみだって例外じゃない。例えば、昔は良かった、あの頃は良かった、なんていう記憶の美化はその最たるものじゃないか。僕はいつだって怯えている。誰かが僕の前に突然現れて、身に覚えのない罪を糾弾するんだ。それを嘘だと信じているのは僕だけで、それこそが真実じゃないのか、って」
彼との二十年近い間の中で、俺は何度か似たような言葉を聞かされた。だから彼は冗談ではなく、本当に怯えていたのだ。改めて思う。俺は彼のこの言動を奇矯な振る舞いの一種として捉えることはせず、もっと真剣に耳を傾けるべきではなかったのか、と。
※1 本作は主に、隣の芝生の青さが許せなくて燃やし尽くしたいと思ったことのあるひと、現在その感情を抱えているひと、のために書かれたものです。『嫉妬なんて馬鹿みたいねぇ』と素直に言える幸せなひとが読むべきものではありません。
※2 過去の短編「想い出の詩」を下敷きにしています。
※3 参考・引用に使った書籍は以下になります。良かったらみなさんも読みましょう。
桑原武夫・大槻鉄男選『三好達治詩集』(岩波文庫)
三好達治『詩を読む人のために』(岩波文庫)
三好達治選『萩原朔太郎詩集』(岩波文庫)
大岡昇平編『中原中也詩集』(岩波文庫)
神西清編『北原白秋詩集』(新潮文庫)
福永武彦編『室生犀星詩集』(新潮文庫)
立原道造『僕はひとりで夜がひろがる 立原道造 全詩+物語』(ちくま文庫)
ランボオ『地獄の季節』(岩波文庫)
宇佐美斉訳『ランボー全詩集』(ちくま文庫)
ポー『ポー詩集』(新潮文庫)
ボードレール『ボードレール詩集』(新潮文庫)
ヴェルレーヌ『ヴェルレーヌ詩集』(新潮文庫)
カミュ『異邦人』(新潮文庫)
西澤保彦『黄金色の祈り』(中公文庫)