あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
i)登場人物の紹介
エンリーケイ
五十二歳の夢拾い。元空挺救助隊長。
世話好きで冷静、危険な場面では誰よりも頼りになる一方、自分の生活は壊滅的。眼鏡を冷蔵庫へ入れ、蕎麦を靴箱へしまうこともある。二十年前の事故以来、空を飛ぶことをやめている。
マルタン
黄昏劇場の再建を目指す若き技師。
理性的に振る舞おうとするが、感情がすぐ顔へ出る。亡き父の設計した劇場を守ろうとするあまり、重大な問題を隠してしまう。
ジュリー
人の夢に残された音や匂いを感じ取れる歌い手。
優しく芯が強い。誰かに守られるだけでなく、自分で休む時と歌う時を選び、黄昏劇場の舞台へ立つ。
マイケラ
六十七歳の元舞踏家。
華やかで辛辣だが、孤独の痛みを知る世話焼き。エンリーケイへ「踊りは盾になることではない」と教える。
アンバー
若き飛行隊員。
エンリーケイを尊敬しているからこそ、彼の無謀な単独行動には正面から反対する。空中作戦では彼の相棒を務める。
カントレル
黄昏劇場の安全を審査する監察官。
融通が利かないと批判されても、自ら危険な梁の下へ立って検査を続ける。思い出と安全を切り分ける実務家。
カプリ
食堂を切り盛りする女性。
自分の選択と料理に絶対の自信を持つ。名物「黄昏すだち蕎麦」で、人々の腹と心を支える。
ダーリン
猫ほどの大きさをした銀翼獣。
甘えん坊で悪戯好き。蝶ネクタイや点検札を持ち逃げするが、物語の重要な秘密を宿している。
ii)あらすじ
人々が手放した夢から生まれる「迷い子の夢」を回収する、五十二歳の夢拾いエンリーケイ。
かつて空挺救助隊長として名を馳せた彼は、二十年前の事故で妻アデルを救えなかった罪悪感から、空を飛ぶことをやめていた。
ある日、若き技師マルタンが、黄昏劇場の封印棚から現れた銀翼の手紙を持ってくる。劇場地下の夢受け水盤には、三百十二羽の迷い子の夢と、約二千四百枚の残響羽が蓄積していた。
満月の夜に中央水晶が破裂するまで、あと二十日。
だが、夢は持ち主本人の同意なしには戻すことも、別の形へ変えることも、手放すこともできない。
エンリーケイは、技師、歌手、商人、飛行隊員、監察官、舞踏家らを集め、無人の劇場から街全体へ舞台を届ける計画を立てる。
安全審査、隠された腐食、二十年前の事故記録、妻が未来へ残した手紙。調査が進むほど、中央水晶に封じられた最大の夢が、エンリーケイ自身のものだと判明する。
「二十年前へ戻り、今度こそ全員を救いたい」
一人で全てを背負おうとする彼は、仲間たちへ仕事を任せ、助けを求めることができるのか。
そして劇場崩落の危機の中、二十年ぶりに銀翼を広げた彼が選ぶのは、戻れない過去か、今ここにいる人々との未来か。